長期平準定期保険とは?|特徴やメリット・デメリット

長期平準定期保険とは?|特徴やメリット・デメリット

法人税対策として活用される法人保険の1つである長期平準定期保険をご存知でしょうか?

法人税対策として活用される長期平準定期保険ですが、しっかりと特徴を理解したうえで加入しないと、思ったような効果が得られない可能性があります。

今回は、長期平準定期保険を活用する場合に注意すべき特徴や、メリット・デメリットについて解説します。


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目次

1.長期平準定期保険(読み方:ちょうきへいじゅんていきほけん)とは?

長期平準定期保険(読み方:ちょうきへいじゅんていきほけん)とは、「95歳満期」や「99歳満期」、「100歳満期」など保険期間が長期にわたる定期保険で、長期定期保険と呼ばれることもあります。保険料は一定で保険期間中変わることはありません。

下記の条件を満たした定期保険を「長期平準定期保険」と呼んでいます。

  • 保険期間満了時の被保険者年齢 > 70歳
  • 被保険者の加入年齢+保険期間満了までの期間×2 > 105
  • 逓増定期保険に該当しないもの

長期定期保険は、定期保険の一種で、被保険者(保障の対象者)が死亡または、高度障害状態になったときに保険金が受け取れます。
参考:定期保険の種類|それぞれの特徴や選び方とは?

長期定期保険の契約例
契約年齢:40歳(男性)
保険期間:99歳満期(99歳払込満了)
保険金額:1億円

長期平準定期保険イメージ図

「長期平準定期保険」は、法人を契約者、経営者や役員を被保険者として活用されることが多い商品です。死亡保険金を経営者や役員の死亡退職金や弔慰金、事業承継対策資金として活用できます。

なお、一定の要件を満たすと、法人の支払った保険料の一部を損金処理できます。

 

 

2.長期平準定期保険は、解約返戻金が受け取れる?

一般的に定期保険は掛け捨てで、保険期間の途中で解約しても、解約返戻金が全くないか、あってもごくわずかです。また、満期保険金もありません。

しかし、長期平準定期保険は保険期間の途中で解約した場合、所定の解約返戻金が受け取れます。つまり、長期平準定期保険には資産性があり、経営者や役員などの勇退退職金の準備にも活用できます。

なお、長期平準定期保険にも満期保険金はありません

 

 

4.長期平準定期保険の保険料の経理処理(仕訳)

法人契約の長期平準定期保険の保険料は、下記のように経理処理(仕訳)を行います。
参照:法人が支払う長期平準定期保険等の保険料の取扱いについて(国税庁)

なお、2019年6月28日付けで国税庁から「法人税基本通達」等の一部改正が発表され、2019年7月8日以降に法人で加入する定期保険等の保険料に関する経理処理方法が変更となりました。

詳細は下記ページをご参照ください。
参照:法人保険の経理処理(契約日が2019年7月8日以降の契約)

2019年7月7日以前に法人で加入した契約については、下記経理処理が適用されます。

 

・保険期間の当初6割相当期間

保険期間の当初6割相当の期間は、支払保険料の1/2を定期保険料とし損金算入し、残りを前払保険料として資産計上します。

例)年間保険料100万円を支払った場合の経理処理

貸方 借方
定期保険料     50万円
前払保険料     50万円
現金・預金     100万円

 

・保険期間の残り4割相当期間

保険期間の残り4割相当の期間は、支払保険料の全額を定期保険料として損金算入するとともに、保険期間の当初6割相当の期間で資産に計上した前払保険料の累計額を残り4割相当期間で均等に取崩して、定期保険料として損金に算入します。

 

 

5.長期平準定期保険に加入すると節税対策になる?

長期平準定期保険に加入すると、法人の節税対策になるといわれますが、正確には節税ではなく課税の繰り延べです。

保険料支払時には、保険料の一部を損金算入できますが、解約返戻金受取時の経理処理は下記の通り、解約返戻金から資産計上していた前払保険料を差し引いたものが、雑収入となり法人税の課税対象となります。

例)前払保険料500万円、解約返戻金900万円を受け取った場合の経理処理

貸方 借方
現金・預金     900万円 前払保険料     500万円
雑収入       400万円

つまり、長期平準定期保険に加入したからといって節税対策になるわけではありません。解約時に雑収入と同額以上の損金がないと最終的に課税されてしまいます。

よって、長期平準定期保険の解約返戻金を受け取った際に経営者や役員の勇退退職金などの使い道がなければ、最終的に「解約返戻金-前払保険料」が雑収入となり、解約時に課税が繰り延べられただけという結果になります。

 

 

6.長期平準定期保険のメリット・デメリット

法人契約で長期平準定期保険を活用するメリット・デメリットは下記の通りです。

 

メリット1:保険料の一部が損金算入でき、法人税の軽減が可能

長期平準定期保険の保険料の経理処理部分で解説した通り、保険料の一部を損金算入することが可能で、法人税の軽減になります。

ただし、これは節税ではなく、課税の繰り延べという点に注意が必要です。受け取る解約返戻金を経営者や役員の退職金として活用するなどの出口対策がなければ、解約時に「解約返戻金-前払保険料」が益金となり、課税されてしまいます。

 

メリット2:長期平準定期保険には資産性があり、解約返戻金が受け取れる

長期平準定期保険は定期保険の一種ですが、資産性があり、解約返戻率のピーク時に解約すると支払った保険料相当額の解約返戻金が受け取れます。保険料の一部を経費化しながら、簿外での資産形成が可能となります。

途中解約時に法人が受け取る解約返戻金は、経営者や役員の退職金だけでなく、緊急時の事業資金として活用することも可能です。

また、解約返戻金の一定範囲内までの契約者貸付を受けることもできます。

契約者貸付とは?

契約者貸付とは、契約している生命保険の解約返戻金の一定範囲内で、保険会社から貸し付けを受けることができる制度です。

契約者貸付を利用する際には、下記のような点に注意する必要があります。

  • 貸付金には所定の利息(複利)が付く
  • 貸付金が未返済のまま元利合計額が解約返戻金を上回った場合、契約が失効する
  • 貸付金が未返済のまま満期を迎えたり、被保険者が死亡した場合、それぞれ満期保険金・死亡保険金から、その元金と利息が差し引かれる

 

メリット3:解約返戻率が高い時期が長い

長期定期保険の解約返戻率のピークは契約から20年~30年後に来ますが、ピークを過ぎても解約返戻率の下がり方が緩やかで、使い勝手がいいというメリットがあります。

例えば、役員の生前退職金の準備として長期平準定期保険に加入していた場合で、役員の退職が予定していた時期より多少前後にずれても、返戻率が高い時期が長い長期定期保険であれば、対応できます。

長期定期保険の解約返戻率例
契約年齢:40歳(男性)
保険期間:99歳満期(99歳払込満了)
保険金額:5,000万円

経過年数 年齢 累計保険料 解約返戻金 返戻率
1 41 1,183,800円 85,000円 7.18%
2 42 2,367,600円 1,325,000円 55.96%
3 43 3,551,400円 2,565,000円 72.23%
4 44 4,735,200円 3,810,000円 80.46%
5 45 5,919,000円 5,065,000円 85.57%
10 50 11,838,000円 10,230,000円 86.42%
15 55 17,757,000円 15,440,000円 86.95%
20 60 23,676,000円 20,675,000円 87.32%
25 65 29,595,000円 25,890,000円 87.48%
30 70 35,514,000円 30,830,000円 86.81%
35 75 41,433,000円 35,385,000円 85.40%
40 80 47,352,000円 39,420,000円 83.25%
45 85 53,271,000円 42,750,000円 80.25%
50 90 59,190,000円 45,220,000円 76.4%
55 95 65,109,000円 45,810,000円 70.36%
59 99 69,844,200円 0円 0%

上記契約例では、契約から5年経過後には返戻率が85%を超え、75歳まで返戻率が85%を超えた状態が続きます。

 

デメリット:早期解約はデメリット大

長期平準定期保険は、早期に解約すると、解約返戻金をごくわずかしか受け取れない可能性があります。つまり、大きく元本割れすることになり、大きな損害が発生します。

特に一定期間内の解約返戻金を低く抑えた低解約返戻金型の長期平準定期保険の場合には、早期解約に注意が必要です。

生命保険の保険料は、毎年(毎月)支払い続ける必要がありますので、ムリのない範囲で保険料を設定する必要があります。今期は利益が出たからと、過大な保険料を設定してしまうと、翌期以降の保険料支払いが困難になり、途中解約を余儀なくされることもあり得ます。

 

 

7.長期平準定期保険と逓増定期保険との違いとは?

長期平準定期と同様に法人の決算対策で利用される法人保険に逓増定期保険(読み方:ていぞうていきほけん)がありますが、どのような違いがあるのでしょうか?長期平準定期保険と逓増定期保険との比較は下記の通りです。
参考:逓増定期保険とは?|特徴やメリット・デメリット

 

・死亡保険金額の違い

長期平準定期保険は、契約時から満期まで死亡保険金額(保障額)は一定で変わることはありません。

一方、逓増定期保険(読み方:ていぞうていきほけん)は、保険料は一定ですが、保険金額(保障額)が契約当初の5倍までの範囲で増加する商品です。

 

・解約返戻率のピークの違い

長期平準定期保険の解約返戻金のピークは、契約から20年~30年で来ます。解約返戻率のピークが来た後も返戻率の下がり方が緩やかという特徴があります。逓増定期保険と比較すると、解約返戻率が高い時期が長く続きます。

一方、逓増定期保険の解約返戻率のピークは、契約から5年~10年後です。解約返戻率がピークを迎えた後は、返戻率の下がり方が長期定期保険と比較すると、早いという特徴があります。

逓増定期保険は、長期定期保険と比較すると、短期間で解約返戻金を受け取り役員退職金の支払いなどに活用したいという場合に向いています。

一方、長期定期保険は長期間の保障を得ながら、20年~30年後に解約返戻金を受け取るような用途に向いています。例えば、40代くらいの経営者が長期の保障を準備しながら、65~70歳くらいで引退し、解約返戻金を退職金として受け取るイメージです。

 

 

まとめ

長期平準定期保険の特徴やメリット・デメリットをご理解いただけたでしょうか?

上記の通り、長期平準定期保険は逓増定期保険と同様に個人で活用されることはほとんどなく、主に法人で活用される商品です。長期平準定期保険は、逓増定期保険と比較すると、解約返戻率のピークも長く、扱いやすい商品といえます。

今回の記事を参考に長期平準定期保険の特徴を理解したうえで、ご活用頂ければと思います。

  • どのような保険を選んだらいいのかわからない
  • 今、加入している生命保険が、どのような保障内容になっているか確認してもらいたい
  • 見直し方をアドバイスして欲しいが、誰に相談していいか分からない など

保険の選び方や見直し方で悩まれている方は、保険のプロであるFP(ファイナンシャル・プランナー)による無料相談(大阪/兵庫/京都/奈良)をご利用ください。

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